ベンチプレスのバーの挙上における肘関節伸展の重要性

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ベンチプレスでバーを挙上するとき、肘を伸ばす動作と胸を寄せる動作の協調運動が重要になってきます。今回はそのあたりの生体力学的なところのご紹介です。

ベンチプレスの垂直方向の軌道については、以前の記事も参考にしてください。

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モーメントアームについて

まずは基本のおさらいです。力学的な観点から考える場合、モーメントアームについての理解が不可欠です。

モーメントアームとはテコにおける支点から力点までの水平線上の距離のことです。

モーメントアームが大きいほど、つまり体(支点)と重り(力点)が離れているほど、重りを支えたり動かしたりするのに大きな力が必要になります。逆に言うと、体と重りが近くにあるほど重りを制御するのは楽になります。

モーメントアーム

ちなみに、てこの原理により、モーメントアームに差があると、軽い重りと重たい重りが釣り合うという現象が起こります。

てこ

重たいウエイトを扱いたかったら、なるべく支点に近いところでウエイトを動かすことが重要であるということがわかっていただけたかと思います。

バーを挙上するときの水平方向における動作

肘関節の伸展と、肩関節の水平屈曲によってバーが挙上されます。(垂直方向の運動も合わせてみると、現実にはさらに肩関節の屈曲も同時に起こっています)

th3uorotycそのため、肘関節と肩関節の2つの支点にかかるモーメントについて考えることが必要です。

ダンベルベンチプレスとの違い

ここで、まずはより力学的に単純なダンベルベンチプレスについて考えてみます。

ダンベルとバーベルの違いとして、手の幅が固定されているかいないかという点があります(ダンベルベンチプレスでは手幅が自由に変えられます)。

ボトムポジションでは、ダンベルの場合もバーベルの場合もほぼ同じ手幅になります。これは前腕が垂直になることで、肘関節にかかるモーメントがゼロになり、肘関節にとって最も効率の良い位置となるからです。

しかし、ダンベルを挙上してスタートポジションに戻すと、2つの種目で手幅に大きな違いが生まれます。

初めに例として、手幅を変えずに挙上した場合をみてみましょう。

untitled-design-10-811x1024上の画像のように手幅を変えないままダンベルを挙上すると、バーベルベンチプレスと同じような見た目になります。ボトムポジションではとくに問題ありませんが、スタートポジションではかなり辛く感じると思います。これは、肩関節からのモーメントアームが無駄に大きいため、ダンベルを支える大胸筋に大きな負担がかかるのが原因です。

続いて、力学的に効率的なフォームについてみてみましょう。untitled-design-12-811x1024

意識してか無意識かは別として、ほとんど全ての人がこの画像のようにスタートポジションに戻るにつれて手幅を肩幅程度まで小さくして、肩関節と肘関節からのモーメントアームが極力小さくなるようなフォームにしていると思います。

さて、バーベルベンチプレスのスタートポジションでは、手幅を広いままですが、とくにバーを支えるのにしんどさは感じません。バーベルベンチプレスでも、ダンベルの場合と同じように肩関節からみて手の位置は遠いはずですが、このような差が生まれる原因は何でしょうか。

それは、上腕三頭筋の関与の有無です。(ダンベルベンチプレスで、バーベルベンチプレスほどの高重量が挙上できないのは単純に不安定なことだけが原因ではありません)

ダンベルベンチプレスでは、対抗するべき負荷はダンベルにかかる重力のみです。重力は当然ダンベルから垂直方向にのみかかっています。そのため、肘関節は常にダンベルの真下に位置するのが最も効率的な動きとなります。ダンベルを下ろすにつれて肘が開くため、それにつれて手幅が広がっていき、ダンベルを上げるにつれて元の肩関節と肘関節とダンベルが垂直線上に並ぶ位置に弧を描くようにして戻っていきます。

このように、ダンベルが肘の真上にくるよう保たなければならないので、挙上の動作において、ダンベルベンチプレスでは上腕三頭筋を最大限に使うことができません。もし上腕三頭筋を最大限に使おうとすると、肘が伸びすぎてしまい、ダンベルが体の外側にずれてしまうからです。triceps-lateral-forces

肘を伸ばすと手幅が外側へ広がる方向に力が生まれる。

ダンベルベンチプレスでは、ダンベルが外側へずれてバランスがとれなくなってしまう。

これは筋電図でも確認されていて、ダンベルでもバーベルでも大胸筋の運動は同じですが、ダンベルでは上腕三頭筋の関与が小さくなっています

バーに対して外側に働く力(Lateral force)の意義

how-to-bench-graphic-3-1外側に働く力(Lateral force)が加わることで何が良いのでしょうか。

この力は垂直方向の力(Vertical force)の約25~30%程度であり、その合力はたかだかVertical forceの3~4%ほどが増加するにすぎません。

最も重要なことは、力が斜めの方向に働くことにより、支点が約20%ほど肩関節に近づき、モーメントアームが短縮するということです。

how-to-bench-graphic-2左側:単純な垂直方向の力をみた場合の肩関節にかかるモーメントアーム。

右側:合力をみた場合のモーメントアーム。左側と比べて大きく短縮されている。

ベンチプレスでは手の幅が変わることはありません。そのため、必然的に大胸筋と上腕三頭筋の協調動作が起こります(大胸筋は肩関節を水平屈曲させ、上腕三頭筋は肘関節を伸展させます)。手幅が固定されると、前腕もほとんど動かないため、肘関節を伸展するにつれて、肩関節の水平屈曲が同時に起こります。つまり、肘を伸ばそうとすれば肩も水平屈曲していくし、肩を水平屈曲しようとすれば肘も伸びていくのです。how-to-bench-graphic-1-1

上腕三頭筋が肘を伸展するにつれて、肩関節が水平屈曲しやすくなる。

大胸筋が肩関節を水平屈曲するにつれて、肘関節を伸展しやすくなる。

Lateral forceをうまく使うために脇を閉める

手幅が狭いほど、肘を伸展させる負荷が大きくなります。逆に手幅を大きく広げると、自然と前述したLateral forceが発生するため、肘関節を伸展しやすくなります。

また、同様の理由から、脇を閉めて肘を体の側面に近づけることも肘関節の伸展しやすさに影響します。つまり、脇を閉めて肘を体の側面に寄せることで、肘より手が外側に位置するためにLateral forceが発生し、肘関節を伸展させやすくなります

ベンチプレスで「肩甲骨を寄せろ」とか、「広背筋を使え」と言われるのはこのあたりの理由です。

untitled-design-13-811x1024上と比べて下の方は肘が体の側面に近づいている。下の画像のように脇を閉めて、肘を体の側面に近づけることで、Lateral forceにより肘を伸展しやすくなる

ただし、ここで注意点があります。

肘を体の側面に近づけすぎると、ボトムポジションでは、横からみたときに肘がバーより足側に位置するようになります。このこと自体は悪いことではありませんが(バーを挙上し始める際に速やかに頭側へと戻しやすくなるため)、バーがスティッキングポイントを超える辺りでは、肘がバーの真下に戻っている必要があります

elbows-in-front-midrange-1024x647上は正しい動作。ボトムポジションでは、肘がバーより足側に位置しているが、中間辺りまで上げたころにはバーの真下に戻っている。下は非効率的な動作。バーが中間辺りまで上がってきても肘が足側にあるまま。これでは肘や肩に無駄なモーメントが発生してしまう。

肘の伸展にかかる負荷

肘の伸展にかかる負荷は動作の範囲に応じて変化します。

肘は上腕が床と平行に近づくにつれて外側へ移動し、平行な状態から離れるにつれて内側へ移動します。そのため、肘関節は下の画像のように弧を描くような軌道を描きます。

elbow-path-bench-press-540x1024肘が円弧の軌道に沿って動くので、上腕が床と平行な状態になったとき(上の画像で中段のとき)に、最も肘と肩の距離が遠く(モーメントアームが大きく)なります。モーメントアームが大きいということは、ここで一番負荷が強くなるということです。多くの人のスティッキングポイントが上腕が床と平行になった状態のところにあるのは、ここが最も肘を伸ばす負荷が大きくなるからです。

まとめ

ベンチプレスでは、ダンベルと違い、上腕三頭筋をうまく使い、肘を伸展することで大きな重量を挙上できる。

肘を効率的に伸展させるためには、手幅を広めにしたり、脇を閉めて肘を体の側面に寄せたりしてモーメントアームを小さくすることが有効となる。

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