スクワットのスティッキングポイントを通過するための技術論

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スクワットに失敗するパターンの多くは、ボトムポジションから全く立ち上がれないか、スティッキングポイントを超えられないかの2つです。

ボトムポジションから立ち上がれないのは単純に筋力の問題であることが多いですが、スティッキングポイントを超えられないのはテクニックの要素が大きいです。

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スクワットのスティッキングポイント

上図はスクワット中の様々な深さ(膝関節の角度)において、膝関節の伸展トルク(オレンジ線)と股関節の伸展トルク(青線)とバーの上昇速度(紫線)を見たものです。

ちなみにトルクとは回転に要する力で、モーメントアームの長さ×鉛直方向への力です。

膝関節伸展トルクはボトムポジションで最も大きく、徐々に減少していきます。

それに対して股関節伸展トルクはスティッキングポジションまでほぼ一定して高いままです。

バースピードはボトムからの反発で一瞬高くなり、その後スティッキングポイントにおいて最低となり、そこを抜けると再度高くなるという、二峰性の曲線を描きます。

これらのグラフから、スティッキングポイントを超えられない技術的な問題を理解しましょう。

グッドモーニングスクワットになってしまう

スクワットは股関節伸展と膝関節伸展の協調運動です。

しかし、股関節が伸展しない割に膝関節だけが伸展してしまうことでグッドモーニングスクワットになってしまいます。

最初のグラフで見たとおり、膝関節伸展トルクはどんどん減るのに対して、股関節伸展トルクはあまり変わらないことから、膝関節だけ伸びてしまうグッドモーニングスクワットがスティッキングポイントで起こりやすい理由が理解できるかと思います。

さらに、スクワット中は脊柱起立筋群にも多大な負荷がかかっているため、この筋群が下降局面からスティッキングポイントに至るまでの間に疲労することで、体幹が前傾しやすくなることもグッドモーニングスクワットの一因となります。

グッドモーニングスクワットによる弊害

股関節伸展トルクが増大する

グッドモーニングスクワットになると、まずは何とか重心とバーベルを一致させるためにお尻を後方に引く形になります。

こうなると股関節はさらに重心から遠くなり、膝関節が重心に近づくため、余計に膝関節だけ伸びやすい状況になります。

限界に近い状況でこうなっては、もう股関節を伸展させることはできません。

余分なモーメントアームが発生する

もうひとつの失敗例としては、バーベルが重心より前方にずれてしまう、というものがあります。

この場合、重心を支える基底面(mid-foot position)からバーベルがずれてしまうため、姿勢を維持するのに余計なモーメントアームが発生してしまいます。

この場合も限界近い状況では立て直すことはできません。

ロンバードのパラドックスが成立しなくなる

グッドモーニングスクワットになった途端にバランスを失う最大の原因がこれです。

簡単にいうと股関節と膝関節の伸展筋群が協調性を失うのですが、この理由については少し複雑なので、以下にもう少し詳しく述べます。

ロンバードのパラドックス(Lombard’s paradox)

ここで、ロンバードのパラドックスというものを紹介します。

ロンバードのパラドックスとは、スクワットや座った状態から立ち上がる際に、大腿四頭筋とハムストリングスが同時に収縮するというものです。

大腿四頭筋は股関節を屈曲・膝関節を伸展させます。一方、ハムストリングスは股関節を伸展・膝関節を屈曲させます。

このように、両者は相反する働きをもつのに、同時に収縮するというのは一見矛盾しているためパラドックス(矛盾)と呼ばれています。

この機序は、それぞれの筋肉の起始と停止が少しずれていることで説明されます。

ハムストリングス(左)は股関節より足側から起始し、膝関節のわずかに足側に停止します。

一方、大腿直筋は股関節より頭側から起始し、膝蓋骨に停止します。その力は膝蓋腱を介することで膝関節よりだいぶ足側まで及びます。

この違いによって、人体は効率的に立ち上がることができるようになっています。

つまり、ハムストリングスと大腿四頭筋の長さが変わらない限り、臀部の筋群は股関節を伸展させるとともに、膝関節も伸ばすこともできるようになり、大腿四頭筋は、膝関節を伸展させるとともに、股関節も伸ばすことができるようになるのです。

グッドモーニングスクワットになると、ハムストリングスが伸展してしまうため、このメカニズムが崩壊し、大腿四頭筋の力が股関節伸展に利用できなくなります。

スティッキングポイントを越えるための技術論

ここまでの大雑把なおさらいです。股関節伸展をおきざりにして膝関節が伸展してしまう(=グッドモーニングスクワットになってしまう)ことによって、股関節を伸展させる力が減ってしまい、それによって挙上に失敗する、という内容でした。

では、スティッキングポイントを乗り越えるためにはどうすれば良いのでしょうか?

ハムストリングスを鍛えてグッドモーニングに強くなるという理論ではありません。

やはり、「股関節と膝関節をバランスよく協調させて伸展させる」というのがポイントです。

下降局面

しゃがむ動作中はバーベルを重心に向けて真っ直ぐ下ろすということがポイントです。

しゃがむ力をバーベル挙上の力に効率よく変換するには、床からの反力を最大限に受け取ることが重要です。

ちょうどボールを効率よく弾ませるようなイメージで、バーベルの中央を重心に向けて垂直に降ろします。

ボトムポジション

体が前傾するのが最も良くないので、むしろ体幹を起こすイメージで立ち上がります。

普通に立ち上がると、トルクの少ない膝関節伸展が先行することが多いので、前傾した体幹を直立させるイメージで立ち上がるとちょうど良いです。

まさにグッドモーニングのように、バーベルの中間を、そこと交差している脊椎で押していくイメージです。

また、可能な範囲で切り返しを速くすることで、しゃがみで生まれた力をストレッチショートニングサイクルを通じて、挙上に最大限に利用することができるようになります。

スティッキングポイント

最初の股関節伸展トルクと膝関節伸展トルクの減り方の違いをよく理解した上で、膝関節だけが伸びないように注意します。

バーの挙上速度はどうしても落ちるので、ここで焦ってバーを上げようとすると膝だけが伸びてしまいます。

そうではなくて、ちょうどデッドリフトのようなイメージで、股関節を前に突き出しつつ、体幹を起こしていくように力を込めます。

こうして着実に股関節のモーメントアームを減らすことで、股関節伸展トルクを減らしていき、それがひいては股関節の伸展につながり、スクワットの挙上成功につながります。

膝を内反させずに、開く、という下図のようなアドバイスも、臀筋の力を緩めないことに加えて、股関節のモーメントアーム悪化予防にもつながります。

まとめ

スクワットの挙上では、股関節と膝関節を協調して伸展させることが必要。

そのためには、負担の大きい股関節伸展を意識して行う必要がある。

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