Effective reps (stimulating reps) というモデルは完璧ではない

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([参考 The Evidence is Lacking for

“Effective Reps”](https://www.strongerbyscience.com/effective-reps/)

Effective reps (stimulating reps) とは

Effective reps (stimulating reps) とは、筋肥大を引き起こす刺激となる有効な刺激となる動作のことです。ひとつの目安として、オールアウト前のラスト5レップがEffective reps (stimulating reps) として理解されています。

筋肥大を引き起こすためには、「高閾値モーターユニットに属する筋繊維が活性化」し、「その筋繊維に一定以上の機械的緊張(mechanical tension)がかかる」という2つの条件が満たされる必要があるとされています。

この2つの条件によって、高閾値モーターユニットに属する筋繊維が、アクチン-ミオシン架橋が作られるのに十分な時間をかけて収縮します。

低〜中強度の場合、サイズの原理により、基本的には閾値の低いモーターユニットに属する筋繊維から活性化します。それらが徐々に疲労することで、セットの終盤には高閾値のモーターユニットが動員されるようになります。

また、高強度の場合は、最初から高閾値のモーターユニットが動員されます。

この高閾値モーターユニットが動員される強度の目安が85%1RMとされており、その強度における限界反復回数の目安が5レップであるため、限界前のラスト5レップが、Effective reps (stimulating reps) と呼ばれるようになりました。

ちなみに、低〜中強度でも、全速力で動作すると高閾値モーターユニットが動員されますが、この時は力−速度関係により個々の筋繊維にかかる機械的緊張は小さいものとなり、筋肥大を引き起こす刺激としては不十分になります。

上図 力−速度関係の概念。収縮速度が増すほど、個々の筋繊維で発揮される力は小さい

Effective reps (stimulating reps) に関するGreg Nuckols氏の補足

Effective reps (stimulating reps) は、筋肥大に関する多くの研究結果をスマートに説明するモデルです。

• 5〜30RMの範囲では、ボリュームが同等であれば、同等の筋肥大が得られる

• 5RM以上の負荷(5回未満しか反復できない負荷)では、筋肥大効果が劣る

• セット間のインターバルは長くして、中枢性疲労が抜けるようにし、高閾値モーターユニットが動員されなくなるのを防ぐ方が筋肥大しやすい

例えば、上記のようなこれまでのエビデンスをすっきり説明してくれます。

Greg氏は、これらのことも踏まえて、Effective reps (stimulating reps) というモデルが優れていることは認めた上で、そのモデルが単純化され過ぎていることに警鐘を鳴らしています。

([参考 The Evidence is Lacking for

“Effective Reps”](https://www.strongerbyscience.com/effective-reps/)

補足1 強度を上げるほど筋繊維の動員が増える?

まずは、強度を上げていくと閾値の高いモーターユニットに属する筋繊維が徐々に動員されていくという仮定についての補足です。

確かに単関節運動や等尺性収縮では、負荷を上げていくほど筋電図での活性が高まります。

しかし、多関節運動はそう単純ではありません。ある強度までは強度の上昇につれて主動筋のEMG活性は高まりますが、それ以上はプラトーになり、そこから先は補助筋のEMG活性が高まっていきます。とくに経験のあるリフターの場合には、ある程度強度が低い段階で主動筋の筋繊維は最大限動員されており、それを超える負荷に対しては補助筋の動員を増すことで対応しているようです。

例 上表は低強度と高強度でのスクワットにおける各筋の活性を示す。

強度が増しても主動筋である大腿四頭筋群(上から3行)の活性はほとんど増えない。一方で臀筋群や半腱様筋といった補助筋の活性は大幅に増す。

このことからみると、スクワットで大腿四頭筋を刺激したいと思ったら、85%1RMほどの強度は必要なく、70%1RM(約12RMに相当)の負荷でも1レップ目から大腿四頭筋の高閾値モーターユニットに属する筋繊維が活性化されていると言えます。

補足2 収縮速度が低下するにつれて機械的緊張が増す?

上記のグラフで図示されているように、力−速度関係は、筋繊維の収縮速度と収縮力との関係の生理学的基礎的事実です。

ただし、それは「単収縮」といって、1回きりの収縮における基礎実験の結果から得られたものであり、「疲労」という要素が介入していない状態での話です。

疲労がない状態での1回きりの最大限の動作であれば、下図のように、

負荷を増していくことによって、発揮される力(青線)は増しつつ動作速度(赤線)は遅くなります。

しかし、75%1RMの負荷で動作を反復していった時には、下図のように、

反復回数が増えて疲労が蓄積されていくことで、動作速度が遅くなりつつ、機械的緊張の指標である発揮される力までもが小さくなってしまいます。

発揮される力が低下するのは、低閾値モーターユニットが疲労して力を発揮できなくなることも影響しているので、単純に個々の筋繊維にかかる機械的緊張が減っているとは言えない面もありますが、単純に動作速度が遅くなるほど、筋肉にかかる機械的緊張が増すということは言えないと思われます。

補足3 高閾値モーターユニットに最大限の機械的緊張がかかる必要がある?

20%、50%、80%、100%の各強度で、等尺性収縮を疲労するまで続けた際の最大自発収縮力(MVC)を調べた研究結果をみていきます。

ここでは、MU100(青線)が相当高閾値の、MU120(黒線)が最も高閾値のモーターユニットを示しています。

各強度での上右のグラフは、各モーターユニットの動員の指標としての発火率を示しています。

各強度での下左のグラフは最も注目してもらいたいグラフで、各モーターユニットが実際にどの程度の力を発揮しているかを示しています。

↑強度20%

↑強度50%

↑強度80%

↑強度100%

4つの強度での各グラフの結果のまとめとして、

• 強度100%での左下のグラフから、MU100はMU1の最大42倍の力を発揮でき、MU120はMU1の最大60倍の力を発揮できる。

• 強度100%での右上のグラフから、MU100の最大発火率は30Hz、MU120の最大発火率は25Hzである。

• 強度50%での左下のグラフから、MU100は強度50%では、途中で発揮する力がピークを迎える。その際に発揮される力はMU1の25倍弱にとどまる。

• 強度80%での左下と右上のグラフから、MU100は最初に最も強い力を発揮しており、その力はMU1の42倍である。また、MU100の発火率は30Hzに達する。一方で、MU120については、最初から最も高い発火率示し、徐々に発揮する力が増してはいくが、発揮している力も発火率もその最大値よりは低い(それぞれ、MU1の32倍と、18Hz)

つまり、これらを言い換えてまとめると、

• 50%の強度において、MU100は最大値の2/3程度の力しか発揮していないし、MU120は最大値の1/2にも満たない力しか発揮していない。

• 80%の強度において、MU100は最大限の力を発揮しているが、その力を発揮しているのは全く疲労のない初期の段階においてである。

• 80%の強度においても、MU120は最大値の1/2をわずかに超える程度の力しか発揮していない。

という結果になります。

このことから、Effective reps (stimulating reps) のモデルの前提に矛盾するのは、

1. 80%というかなりの高負荷を用いても、非常に高閾値のモーターユニットは全てが動員されるわけではない。

2. 80%という高負荷においては、高閾値のモーターユニットの多くが動員されるが、それが最大の力を発揮するのは疲労する前であり、疲労に伴い、発揮する力は低下する。

3. 50%程度の低〜中程度の負荷では、オールアウトしても高閾値モーターユニットは全て動員されない。

ということが挙げられます。

Effective reps (stimulating reps) モデルに対する補足のまとめ

Effective reps (stimulating reps) は、筋肥大において、高閾値モーターユニットに属する筋繊維に、適切な機械的緊張をかけることの重要性を伝えるのには非常にわかりやすいモデルです。

ただ、「オールアウト前のラスト5レップがEffective reps (stimulating reps) である」というように単純化され過ぎて理解されている面があります。

筋繊維の動員率については、多関節運動は単関節運動ほど単純ではありません。

トレーニング経験の多寡によっても動員率には差が出てくる可能性があり、経験豊富であれば、疲労せずとも多くのモーターユニットを最初から動員させられるのに対して、初心者であればある程度の疲労がなければ高閾値のモーターユニットを動員させられない可能性が高いです。

力−速度関係についても、疲労の影響下では単純に動作速度の低下と発揮する力の増加は同義ではありません。

また、機械的緊張については、必ずしも「最大限」の力の発揮を必要とするわけではない可能性があります。

筋力トレーニングと筋肥大の修正モデル

Effective reps (stimulating reps) は単関節運動のミッドレンジやコントラクト種目では非常に当てはまるモデルですが、そうでない場合にはそこまで単純化はできないようです。

そこで、Greg氏が提案する筋肥大のモデルが以下のようなものです。

ある閾値以上の機械的緊張は同化のシグナル経路(mTOR、p70s6kなど)のスイッチを入れるイニシエーターとしての役割を果たします。

同化のシグナル経路のスイッチがONになることで筋タンパク合成(MPS)が起こり、それが積み重なることで筋肥大が起こります。

そして、ある程度の疲労や代謝ストレス(乳酸、脱酸素化、アシドーシス)は、この機械的緊張→同化シグナル経路→筋タンパク合成という反応を促進するプロモーターとしての役割を果たしていると思われます。

結局のところ、筋肥大目的のトレーニングにおいてボリュームが重要なことは周知の事実であるものの、そのボリュームを単純に定量化するのは難しいようです。

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