最適なバルクアップについてのガイドライン

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バルクアップのためのアドバイスというのは質の高いものが少ないのが現状です。

「もっと食べなさい」では、細かい点を最適化するにはどうすればよいかわかりません。

「食事ではエネルギー収支と三大栄養素を計算し、トレーニングではしっかり鍛えなさい」では、成長に伴い変化していく必要エネルギー量と三大栄養素への修正が効きません。

こちらの記事は非常に長い内容ですが、バルクアップについての内容としては本当に秀逸なので、ご紹介したいと思います。

いくつかのグラフを用いてタイプ別のバルクアップの最適化の方法を説明しています。

この内容は

  • 減量を終えて、バルクアップに移ろうと思っている人
  • 現在バルクアップをしているが、うまくいかないため、何かを変えようと思っている人
  • バルクアップのためのカロリー収支などの計算は済ませたが、次にどうしたらよいか迷っている人

を対象としています。

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  1. 筋肉を最大限成長させるために重要な要素
    1. 生まれ持った遺伝的な差がある
    2. 成長速度を決める要素
      1. 1 薬物の使用
      2. 2 摂取カロリー
      3. 3 適応を促すのに十分なトレーニングの刺激
      4. 4 十分なたんぱく質摂取
      5. 5 十分な睡眠・6 ストレス管理
      6. 7 体脂肪率
      7. 8 その他(三大栄養素の摂取バランス、微量栄養素、食事のタイミング・頻度、サプリメントなど)
  2. どれくらい速い成長が見込めるのか
  3. 3通りのバルクアップ法についての方法詳説
    1. 1.制限のゆるいバルクアップ(リラックス・バルク)
    2. 2.制限されたバルクアップ(スロウ・バルク)
      1. ステップ1 カロリー計算
        1. 重要な数値
      2. ステップ2 三大栄養素
        1. たんぱく質
        2. 炭水化物と脂質:どれくらいの比率で増やすのか
      3. ステップ3 カロリー・サイクリング、マクロ・サイクリング
      4. ステップ4 さらなる微調整
        1. 微調整の実際
      5. スロウ・バルクのモデルケースによる実践例 その1
      6. スロウ・バルクのモデルケースによる実践例 その2
    3. 3.極力脂肪をつけないバルクアップ(リーン・ゲインズ)
  4. どのバルクアップ法を選ぶべきか詳細比較
    1. バルクアップ期のみでの比較
    2. 急な体脂肪カットの期限がある場合の比較
    3. 前もってわかっている体脂肪カットの期限がある場合の比較
    4. 増量期間を固定した場合(減量は重視しない)
    5. 体脂肪率が上限に達したらバルクアップを終了する場合の比較

筋肉を最大限成長させるために重要な要素

筋肉の成長速度には限度があります。

トレーニングを開始した初期が成長が最も速く、時を経るごとに徐々に成長は緩やかになっていき、最終的には生理的な限界に達します。

img_4536

縦軸:筋肉の増加量 横軸:時間

年々、トレーニングの刺激に対する筋肉の成長は緩やかになっていく。

トレーニング開始当初の数年が最も筋肉が成長し、最終的には限界(グラフの赤点)に到達する。

生まれ持った遺伝的な差がある

「トレーニングの刺激に対してどれだけ筋肉が成長するか」は遺伝的な要素によって大きく変化します。

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緑:遺伝的に恵まれた人 黄:平均的な人 赤:遺伝的に恵まれていない人

横線が理論的な増量の限界であり、遺伝的に恵まれた人ほど限界近くまで増量できる

遺伝的な影響によって、人類の限界近くまで筋肉が増える人、平均的な増え方の人、限界よりだいぶ手前で成長が停滞する人に分かれます。

遺伝的な要素は(個人レベルでみると当てはまらないこともあるが、集団で比較すると)、スタート時点の筋肉量でだいたい予想できます。

男性と女性の成長を比較したときにも、同じことがみられます。同じプログラムでトレーニングしても、絶対的な成長度は男性の方が高いです。ただし、開始時の除脂肪体重からみた除脂肪体重の増加の割合(%)は実際には同じです。男性の方が除脂肪体重がもともと多いので、その分だけ除脂肪体重(≒筋肉)が増える量が多いのです。

つまり、もし全く同じ身長のトレーニング経験のない人がいた場合、開始時の除脂肪体重の重い人(もともと筋肉のある人)の方が、最終的にはより筋肉がつくと予想できるのです。

では、遺伝的な要素は重要なのでしょうか?

トレーニングするときは、とにかく自分は遺伝的なエリートだと信じ抜くのが良いです。

意思の力は驚くほど強力に身体に作用します。ステロイドだと言って、実際は砂糖(つまり偽薬)を与えたところ、本当にステロイドを投与したような成長がみられたという実験結果もあります。自分自身を信じてください。

成長速度を決める要素

遺伝的な限界近くまで成長できるかどうかは、いくつかの要素で決まります。

リストの上にくるものほど影響が大きく重要度の高い要素になります。

  1. 薬物を使用する(あるいは使用しない)、遺伝的な要素
  2. 摂取カロリー
  3. 適応を促すのに十分なトレーニングの刺激
  4. 十分なたんぱく質摂取
  5. 十分な睡眠
  6. ストレスを最小化すること
  7. 体脂肪率
  8. その他(三大栄養素の摂取バランス、微量栄養素、食事のタイミング・頻度、サプリメントなど)

上のリストをみると、薬物・遺伝と摂取カロリーがトレーニングより上に来ているのに気づくと思います。

これは、みんながトレーニングを最も効率的な方法で行っていなくても、遺伝的に恵まれていて、(薬物を使用し、)十分な食事を摂っていれば、それだけで成長するということです。薬物を使用している人は、他のことに対して気を使っていないのです。

1 薬物の使用

もし薬物を使用する場合、内分泌系にダメージを与えるリスクがあります。この記事は「薬物非使用」トレーニー向けの内容です。

しかし、薬物のものすごい効能は簡単に知っておいた方が良いです。なぜなら、これを知っておくことは、ネットなどで薬物使用者が発信している(大抵は質の低い)アドバイスを妄信しない批判的な目を養うのに役立つからです。

薬物を使用すると、成長速度が速まるだけでなく、成長の上限も生理的な限界を超えてきます。

img_4538

紫:薬物使用あり 緑:薬物なし

薬物使用により、増量の速度は速まるし、増量の限界は生理的な限界を超越する。

では、薬物の使用でどれくらい遺伝的な限界を超えていくのでしょうか。

生理的に恵まれたナチュラルなボディービルダーの場合、身長178㎝、体脂肪率5%ほどで、体重80㎏前後が限界と言われます。

一方、フィル・ヒース(ミスター・オリンピアのチャンピオン)は、身長175㎝で大会時の体重が約115㎏とみられています。これは理論的な遺伝的限界を35㎏も超越しています。

補足ですが、遺伝的な要素は薬物への反応性にも影響します。例えば、ミスター・オリンピアを6度制覇したドリアン・イエーツは、もともとは小柄でしたが、非常に少量の用量だったにもかかわらず、薬物使用後は巨大な体躯を手に入れています。

2 摂取カロリー

十分にカロリーを摂取しないことは、バルクアップがうまくいかないときの最も多い原因です。

肥満の人は別ですが、通常はカロリーが欠乏した状態では筋肉は十分成長できません。

結局のところ、十分なカロリーを摂取しなければ何をしても筋肉は成長しません。

img_4539

緑:十分なカロリー摂取をした場合 紫:カロリー不足の場合

カロリー不足では成長速度は遅くなり、限界値も低下する。

十分なカロリーを摂取しなければ遺伝的な限界まで遠く及びません。

もし停滞した場合、何週にもわたって体重も筋肉も増えていないなら、計算上の必要カロリーの数値がどうであれ、現状よりもさらに食べる必要があります。

そして、見直すべき点としては、以下のとおりです。

  • 計算ミスをしているかもしれません
  • 実際に摂取したカロリーを測定しそこなっているかもしれません
  • 日常生活動作の消費カロリーが多いのかもしれません
  • 新たな目標値に設定しなおさなければいけないのかもしれません

体には過剰なカロリーによる体重増加を最小限にしようとするメカニズムがあります。

この適応のメカニズムはカロリー欠乏に対する適応ほど強力ではありませんが(歴史的に飢えて死ぬことの方が食べ過ぎて死ぬことよりずっと多かったためです)、現代でも続いていて、カロリー収支が計算通りにいかない原因になっています。

3 適応を促すのに十分なトレーニングの刺激

トレーニングの必要性は言うまでもないと思います。もし十分なトレーニングをしていなければ、過剰に摂取したエネルギーのほとんどが体脂肪に変わってしまいます。

4 十分なたんぱく質摂取

組織の修復と成長のために十分なたんぱく質摂取は欠かせません。たんぱく質摂取が不十分だとバルクアップが制限されてしまいます。

5 十分な睡眠・6 ストレス管理

睡眠が不十分だったり、ストレスにさらされた状態では疲労からの回復と成長が妨げられてしまいます。

トレーニングをすればするほど、体にはストレスがかかります。そのため、成長がすすみ、トレーニングの強度やボリュームが高まるにつれて、この要素の重要性が増してきます。

ぜひ良質な睡眠の確保とストレス管理に真剣に取り組んでください。さもなければ成長の速度もピークも低下してしまいます。

7 体脂肪率

体脂肪率が低いほど、体重の増加は筋肉の増加で占められるようになります。

肥満に伴う慢性的な軽度の炎症は、同化(=筋肉を合成すること)作用を低減させ、異化(=筋肉を分解すること)作用を亢進させます。

もし10~12%の体脂肪率でバルクアップを開始すれば、体重増加のほとんどは筋肉の増加によるものになりえます。しかし、もし20%を超える状態でバルクアップを開始すれば、体重増加のほとんどが脂肪の増加で占められることになるのです。

つまり、十分に体脂肪が少ない状態からバルクアップを開始することで、長期間、質の高い(脂肪の増加が少なく、筋肉の増加が多い)バルクアップを行うことが可能になるのです。

8 その他(三大栄養素の摂取バランス、微量栄養素、食事のタイミング・頻度、サプリメントなど)

これらの諸々の要素は、より上級レベルになり、遺伝的限界に近付いてくるにつれて重要性が増してきます。

どれくらい速い成長が見込めるのか

トレーニング経験が長くなるほど、筋肉の成長は遅くなっていくことがわかりました。(ちなみに、体脂肪カットの場合は対照的で、体脂肪の減る速度はトレーニング経験とは無関係であり、体脂肪率によって決まります。)

トレーニング経験によって分類することで、1か月でどれくらい筋肉の増加が望めるのかを見積もることができます。これは摂取カロリーの設定や体重増加の目標値を決めるのにとても役立ちます。

トレーニング経験のレベル分けをすっきり行うことは簡単ではないですが、いろいろな分類がされています。

もしバーベルトレーニングを中心に行っているならば、以下が目安となります。

  ベンチプレス 懸垂 スクワット デッドリフト
・中級(~約2年) 体重x 1.2

体重x 1.2

自重で8回

体重x 1.6 体重x 2

・上級(~約5年)

右記のうち3つを達成

体重x 1.5

体重x 1.5

自重で15回

体重x 2 体重x 2.5

・エリート(~約10年)

上記上級レベルを全て達成

もしくは

上級レベル3つ+右記の1つを達成

体重x 1.8

体重x 1.8

自重で20回

体重x 2.4 体重x 3

 

これらのレベル分けの基づいて、適切な方法でバルクアップすれば以下の程度の成長が見込めます(※この表は下記の内容でも関係するので重要です!)

筋肉の成長のポテンシャル 1か月あたりで見込める増加量
初級者 0.9~1.2㎏
中級者 0.45~0.9㎏
上級者 0.22㎏
  • 身長が高いほど、上記の幅のうち高めの増加量が見込めます。
  • 仕事などの関係でもともと筋肉量が多い初心者は、中級者程度の筋肉の増加量にとどまると思った方が良いです。

3通りのバルクアップ法についての方法詳説

ここからは以下の3通りの方法についての説明です。

  1. 制限のゆるいバルクアップ(リラックス・バルク):カロリー収支や栄養素配分を考慮しない方法です。しばしば「ダーティー・バルク」と呼ばれます。
  2. 制限されたバルクアップ(スロウ・バルク):不必要な脂肪をつけずに筋肉の増加量を最大にする方法です。
  3. 極力脂肪をつけないバルクアップ(リーン・ゲインズ):筋肉をつけつつも極力体脂肪が低い状態を保つ方法です。

見た目や競技上の想定を問わず、根底になる目標は「余分な脂肪をつけずに筋肉を増やすこと」です。

短期間である程度体脂肪がつくことを許容した方が、総合的にみると成長は速いといえます。ついた体脂肪は後でカットするのです。

1.制限のゆるいバルクアップ(リラックス・バルク)

カロリー収支や3大栄養素のバランスを考えないバルクアップです。

余分な脂肪が他の方法よりもつきやすくなりますが、制限がないので、ごちゃごちゃ細かいことを考えないで良いとも言えます。

筋肉の増加速度は十分な量の食事を摂っている限りは最大限確保されます。

リラックス・バルクは、「体重の増加量が大きく、増えた体重のほとんどが筋肉の増加である」夢のようなバルクアップとは異なります。

ただ、このリラックス・バルクを選択した場合、(脂肪も相応に増えるものの)最大限の筋肉の増加が望めます。

img_4540

リラックス・バルク:筋肉は最大限増えるが、脂肪もたくさんついてしまう

三大栄養素のバランスや、カロリー収支(筋肉の回復と成長に使われる分と脂肪として蓄えられる分)を考えずに多量に食べることは最適ではありません。この方法では、他の方法より、余分な脂肪がつきやすいということを意味します。

厳密に体重の増加分のうち、どれくらいが筋肉で、どれくらいが脂肪になるかを予想することは不可能に近いですが、体重の増加量の目標値を定めるのは良い方法です。

予想される筋肉の増加量のポテンシャル(前記の表を参照)に対して、100~150%を目標値にするのが良いでしょう。150%に想定した場合、体重の増加量としては、その2.5倍となりますが、これが通常は最大限度になります。これだけ増えるようにすれば、成長や回復を損ねることはありません。

努力を無駄にしないためにも、少なくともタンパク質の摂取量くらいは気にするのが良いでしょう。たんぱく質が不足すると、図4(Fig.4)と似たような状態に陥ってしまいます。

  • もし、高身長で、トレーニング経験が浅いならば、1か月で3.4㎏の体重増加を目標にすると良いでしょう。
  • もし、平均的な身長で、中級者程度のトレーニング経験ならば、1か月で1.2㎏程度の体重増加を目標にすると良いでしょう。

2.制限されたバルクアップ(スロウ・バルク)

スロウ・バルクは、不要な脂肪はなるべくつけずに、筋肉が最大限成長するように、カロリー収支と三大栄養素のバランスをコントロールするバルクアップです。

今回紹介する3通りの方法のうち、最もお勧めの方法となります。

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スロウ・バルク:筋肉は最大限増えつつ、余分な脂肪が極力つかない

繰り返しになりますが、筋肉と脂肪がどれくらい増えるかを厳密には決められないので、まずは体重の目標値を設定します。

筋肉の成長速度を最大限確保しようとした場合、単純に筋肉が増える分以上の追加のカロリーが必要なので、脂肪が増えるのは避けられません(余分なカロリー摂取が必要なのは、筋肉が最大限増えるためのホルモン・バランスを保つ必要があるのが原因だと思われます)。

成長と回復に有効な三大栄養素のバランスを計算するため、摂取したカロリーの配分はリラックス・バルクよりずっと効率的になります。そのため、体重の増加量の目標値はリラックス・バルクより低めで良いです。ポテンシャルの75~100%に設定すると良いでしょう。

ステップ1 カロリー計算

基本的な流れとしては、「カロリー計算→経過記録→微調整→経過記録→微調整…」というようになります。

数週間毎に経過を記録し、微調整を加えていきます。これを繰り返すことで、体重変化の平均値がわかります。それによって「細かい」調整が可能となります。

微調整のプロセスは絶対に必要です。なぜならば、カロリー過剰(もしくは不足)に対する反応は個人個人で異なるからです。

体脂肪カットを終え、維持期に入り、摂取カロリーが減量中より少し増えると、ホルモン・バランスやエネルギー代謝が通常の状態に戻っていきます。バルクアップの際、計算値より体重増加が少ないことがありますが、これは体が体重を増やさないような状態になっているからです。この現象はニート・バリアンス(NEAT variance:非運動性熱産生《日常生活動作でのエネルギー消費》の個人差)と呼ばれ、人によって差が大きい部分なのです。例えば、ハード・ゲイナーと呼ばれる、体重や筋肉が増えづらい人々は、この非運動性熱産生(NEAT)の反応性が高く、食べれば食べるだけ代謝が高まるので、容易に体重や筋肉が増えづらいのです。

この個人差による部分は厳密に計算することはできません。そこで、いったんは個人差を無視して計算し、実際の体重推移に基づいて修正を加える必要があるのです。

重要な数値

計算にあたって重要な数値があります。

  • 1㎏の筋肉を増やすには、約5500kcalを要する
  • 1㎏の体脂肪を減らすには、約7700kcalカットする必要がある
  • 炭水化物とたんぱく質のカロリーは1g=4kcal、脂質は1g=9kcal
  • 基礎代謝=370 + (21.6 x 除脂肪体重)
  • 維持カロリー=基礎代謝×1.375(週3回トレーニングする場合)

つまり、もし1か月で1㎏の筋肉をつけようと思った場合、体脂肪も同時に1㎏つくとして、体重としては2㎏/月の増加となるので、1か月で約13200kcalの追加のカロリー摂取が必要になります。これは1日あたり440kcalとなります。

1か月で1㎏の筋肉をつけたい場合、体重を1か月で2㎏増やすことを目標にする。1日あたり約440kcalの追加のカロリー摂取を行う

例えば、前期の筋肉増加のポテンシャルに基づくと、高身長のトレーニング初心者であれば、1か月で1.2㎏の筋肉の増加が見込めるので、体重を2.4㎏増やすのを目標にして、1日当たり約530kcalの追加のカロリー摂取を行います。

ステップ2 三大栄養素

基本は、たんぱく質の摂取量は一定にして、炭水化物と脂質の摂取量を増やすことです。

では、それぞれどれくらい増やせば良いのでしょうか?

たんぱく質

バルクアップ中は除脂肪体重1㎏あたり2gを目安に摂取を行います(減量中なら2~3gくらいだが、バルクアップ中はそれよりやや少なめで良いです)。

厳密には筋肉を約1㎏増やすのに、たんぱく質を1~2gほど多く摂る必要があるのですが、これはほとんど誤差の範囲内です。また、炭水化物の摂取量を増やすことに付随してたんぱく質の摂取量も増えるため、この数値は無視しても良いと思われます。

もししばらく減量をしていたなら、バルクアップ時より少し多めのたんぱく質を摂取してきたため、好みであればバルクアップをする際に、たんぱく質の摂取量を減らして炭水化物と脂質の摂取量増加に充てることもできます。ただ、この差も大したことはないので、非常に厳密な計画を行うのでなければ気にするほどではないかと思います。

もし好みならたんぱく質の摂取量を増やしてもよいですが、費用が高くなるので、増える分のカロリーは炭水化物と脂質の摂取量を増やすことで賄うのが妥当かと思います。

炭水化物と脂質:どれくらいの比率で増やすのか

炭水化物:脂質=7:3の比率で増やすのが良いです。

この比率は好みに合わせて10%くらい変えてもよいです。(つまり炭水化物:脂質=6:4~8:2まで可)

脂質による摂取エネルギー量が、総量の除脂肪体重×0.9gを切らないようにしてください。食事管理が味気ないものになりますし、ホルモンの機能維持のためにも好ましくありません。

脂質は除脂肪体重1㎏あたり0.9~1.3gの摂取が良いですが、仕事など日常生活でのカロリー消費が多い場合はこの限りではありません。総摂取カロリーの20~30%を脂質から摂取するようにします。

脂質の摂取量が決まったら、残りの摂取カロリーを炭水化物から摂取するよう設定します。

例えば、摂取カロリーを1日あたり600kcal増やすとして、炭水化物を多めに増やしたいので75:25の比率にした場合、炭水化物を115g(=460kcal)増やし、脂質を15g(=135kcal)増やします。

ステップ3 カロリー・サイクリング、マクロ・サイクリング

これは、摂取カロリーや三大栄養素(マクロ)のバランスを、トレーニング日と休養日それぞれで分けて設定する方法です。

理論的な背景は以下の通りです。消費カロリーが増えるトレーニング日にはたくさん食べます。炭水化物はトレーニング時の燃料になりますし、グリコーゲンの消耗を補ってくれますし、回復や成長に不可欠です。脂質は摂取カロリーが過剰な場合は体脂肪として蓄えられやすくなります。そのため、トレーニング日には脂質の摂取を減らし、その代わりに炭水化物の摂取を増やすことで、体脂肪をつきにくくするのと同時に回復や成長を促進する効果(カロリー分配の効率化)が望めるというわけです。

もちろん休養日には必要な脂質の摂取量を満たすために、脂質の摂取を増やし、その代わりに炭水化物の摂取量を減らします。

ただ、現実的には、栄養戦略において、カロリー・サイクリングやマクロ・サイクリングは、影響が小さい割に、調整が煩雑な要素なので、無理に取り入れる必要はありません。

そこで、妥当な案としては、追加の摂取カロリーはトレーニング日と休養日に関わらず一定として、脂質と炭水化物の増やす量だけ調整します。

例えば、1日600kcalを追加し、炭水化物を115g・脂質を15g(カロリーにして約75:25)増やす設定の場合、

  • トレーニング日:炭水化物を135g(設定値+20g)、脂質を5g(設定値-10g)増やします。
  • 休養日:炭水化物を95g(設定値-20g)、脂質を25g(設定値+10g)増やします。

ここではトレーニング日が週3~4日で休養日と同数になる設定です。トレーニング日が増えたり減ったりする場合はあまり大した差が出ないため、導入する意義は薄れるかもしれません。

ステップ4 さらなる微調整

実際の体重増加に応じて複数回の微調整が必要になってくると思います。

代謝の変化の個人差があるため、微調整と次の微調整までの期間にも個人差があります。

微調整の実際

現実的には、初級者から中級者の場合、体重変化が1週間の目標値から少なくとも0.2~0.3㎏くらい誤差が出た場合でなければ意義は乏しいです。

もし2~4週間にわたって目標値ほど体重が増えていないならば、摂取カロリーを増やします。(体重は毎朝起床直後に排尿を済ませてから量ります。週末にそれらの日々の体重の平均値を算出します。そうして求めた平均値を比較の材料にすると正確性が高まります)目標値に向けて修正するために毎日の摂取カロリーを200kcalほど増やします。簡便に考えるために、トレーニング日と休養日に関わらず脂質を10g、炭水化物を20~30g増やします。

バルクアップ前に減量してきた人の方が早めに2回目の微調整が必要になることが多いです。これは代謝が徐々に緩やかになっていくのを計算に入れることができないからです。

スロウ・バルクのモデルケースによる実践例 その1

カロリー・サイクリングやマクロ・サイクリングを行わないシンプルなパターン。

※実践においては、細かい数値は気にしすぎず、概算で構いません。

例 体重73㎏、除脂肪体重66㎏、体脂肪率10%とします。基礎代謝は1800kcalです。

  • 維持カロリー:約2400kcal
  • たんぱく質:160g(除脂肪体重×2.4)
  • 脂質:85g(除脂肪体重×1.3)
  • 炭水化物:245g(2400kcalのうちの残りのカロリー)

ここでバルクアップのための1回目の微調整です。

1か月で1.35㎏の筋肉を増やしたいとします。体重にして1か月で2.7㎏の増量を目指し、1日あたり600kcal追加のカロリー摂取を行います。

好みで炭水化物を少し多めに、炭水化物:脂質=75:25=450kcal:150kcal≒115g:15gで増やします。たんぱく質は不変です。

  • 目標摂取カロリー:2400+600=3000kcal
  • たんぱく質:160g(±0)
  • 脂質:85+15=100g
  • 炭水化物:245+115=360g

体重の増えが少なくなってきたところで微調整を加えます。目標摂取カロリーを200kcal増やします。内訳としては炭水化物を25~30g、脂質を10g増やします。

  • 目標摂取カロリー:3000+200=3200kcal
  • たんぱく質:160g(±0)
  • 脂質:100+10=110g
  • 炭水化物:360+25=385g

 

スロウ・バルクのモデルケースによる実践例 その2

カロリー・サイクリングやマクロ・サイクリングを考える複雑なパターン。

下の内容が煩雑だと感じる場合は、重要度も高くない内容なので、あまりこだわらずにサイクリングを導入しなくても構いません。

上のその1の例と同じく、体重73㎏、除脂肪体重66㎏、体脂肪率10%とします。基礎代謝は1800kcalです。

  • 維持カロリー:約2400kcal
  • たんぱく質:160g(除脂肪体重×2.4)
  • 脂質:85g(除脂肪体重×1.3)
  • 炭水化物:245g(2400kcalのうちの残りのカロリー)

ここでカロリーをトレーニング日(T day)と休養日(R day)で分割します。ここでは週3~4日トレーニングする設定です。

だいたい基本の維持量の20~40%くらいの範囲内で差をつけると良いので、R dayは維持の80~90%、T dayは110~120%の摂取カロリーとなります。

脂質は減らし過ぎるといけないので、下限の除脂肪体重×0.9に気を付けます。ここからT dayの脂質の減らし方が決まります。目標摂取カロリーと他の三大栄養素が決まれば、あとは残りのカロリーを炭水化物からとるようにすればT dayの炭水化物の摂取量が決まります。R dayはT dayで増やした炭水化物を維持量から減らし、減らした脂質を維持量から増やせばできあがりです。

この例ではT dayとR dayのカロリーの差を2400kcalの23%(550kcal)、T dayの脂質を下限の60gにしてみます。

すると、T dayの脂質が85→60gで25gつまり225kcal分減るので、T dayで550の半分の275kcal摂取カロリーを増やすにはあと500kcal分、つまり125g増やさなければいけません。

維持期 T day R day 基本の値
目標摂取カロリー

2675

(+275)

2125

(-275)

2400
たんぱく質 160 160 160
脂質

60

(-25)

110

(+25)

85
炭水化物

370

(+125)

120

(-125)

245

ここでようやくバルクアップのための1回目の微調整です(比較しやすいように、ここも上の例その1と同じ設定にしています。1か月で1.35㎏の筋肉を増やしたいとします)。

体重にして1か月で2.7㎏の増量を目指し、1日あたり600kcal追加のカロリー摂取を行います。増やす量はT dayもR dayも同じ600kcalです。

好みで炭水化物を少し多めに、炭水化物:脂質=75:25=450kcal:150kcal≒115g:15gで増やします。たんぱく質は不変です。

さらにマクロ・サイクリングのため、T dayは脂質を5g(45kcal)の増加に止め、R dayはその代わりに25g(225kcal)増やすことにします。

これに伴い、1日あたり600kcalの増加量を保つために、炭水化物を増やす量はT dayで135g、R dayで95gとなります。

これらを維持期の数値に加えていきます。

バルクアップ期 T day R day 基本の値
目標摂取カロリー

3275

(2675+600)

2725

(2125+600)

維持期+600
たんぱく質 160 160 ±0
脂質

65

(60+5)

135

(110+25)

維持期+15
炭水化物

505

(370+135)

215

(120+95)

維持期+115

体重の増えが少なくなってきたところで微調整を加えます。目標摂取カロリーを200kcal増やします。内訳としては炭水化物を25~30g、脂質を10g増やします。微調整はT day、R dayとも同様の変化量とします。

微調整後 T day R day

基本の値

(これをそれぞれバルクアップ期の数値に加える)

目標摂取カロリー

3475

(3275+200)

2925

(2725+200)

+200
たんぱく質 160 160 ±0
脂質

75

(65+10)

145

(135+10)

+10
炭水化物

530

(505+25)

240

(215+25)

+25

カロリー・サイクリングとマクロ・サイクリングを導入するとかなり複雑になりますね。

3.極力脂肪をつけないバルクアップ(リーン・ゲインズ)

この方法はなるべく体脂肪がついていない状態を維持しながら筋肉を増やすものです。これは、トレーニングに対して筋肉が増える分のみのカロリーを増やすことによって達成されます。

この方法では、最大限の速度で筋肉を増やすことはできません。個人差も大きいので、どれくらいが筋肉の増える最大速度かの予想は困難です。遺伝的にどれだけ効率的にカロリーが分配されるかによって決まります。

最初の2か月で増える筋肉量は、先に述べた2通りの方法の1/3以下になります。変化は非常に些細なものとなり、測定できない程度になるため、とても忍耐のいる方法です。トレーニングを続けていれば筋肉は増えるという原則への強い信念が必要ですが、多くの人は初志貫徹することができません。

この方法が適する人は現実的には、すでに最大限体脂肪が少なく、トレーニングや食事管理に対する自信をしっかりもっている非常に経験豊かなトレーニーくらいに限られます

一般のトレーニーにとって、筋肉がついていくという変化がみられることはモチベーションアップに繋がるため、変化が些細なこの方法はあまりお勧めしづらいです。

img_4542リーン・ゲインズ:脂肪はほとんどつかない。筋肉は非常に緩やかなペースで増えていく。

この方法は十分体脂肪が少ない状態から始めることが必要です。なぜなら、筋肉と脂肪のどちらがが増えているかを判定するために、鏡の見た目、腹囲、キャリパーによる脂肪の厚みの測定を組み合わせていくからです。

実際の方法ですが、減量期を終えたら、

  1. 維持カロリーを見積もり、そこにいったん戻します。
  2. トレーニング記録の伸びが止まるまで、体格の変化をみながら100~200kcalずつ小幅に日々の摂取カロリーを増やしていきます。
  • もしずっと食事管理をしてきて、体重が安定しているなら、上記の1は省略します。
  • もし体重が予定より増えすぎているなら、少し摂取カロリーを減らすことを検討します。

どのバルクアップ法を選ぶべきか詳細比較

まずはじめに、体脂肪が少ない状態のときにバルクアップを始めることの重要性についてです。以下の比較では、体脂肪が同じ状態からスタートした比較を行っています。しかし、スタート地点が異なれば、結果も同じく異なってきます。これは、体脂肪率がカロリーの振り分け(筋肉の増量に使われるか、脂肪の増量に使われるか)に大きな影響を与えているからです。リラックス・バルクでも体脂肪が少ない状態で行えば脂肪より筋肉が増えやすいですし、スロウ・バルクやリーン・ゲインズでも、体脂肪が多い状態で始めれば、うまく筋肉が増えません。これは、一般的に、体脂肪が多ければ多いほど、摂取したカロリーは筋肉の成長ではなく、脂肪の蓄積に寄与することが原因です。

どの方法を選ぶべきか…。これは、個人の嗜好(努力に対してどれくらいの結果が欲しいか)や、社会生活や、体脂肪が少ない状態のままが好きか、筋肉が増えていくのが好きかなどによって決まります。

最初に、1回のバルクアップ期間での比較からみてみます。2つ目に、体脂肪をカットしたい時期が決まっている場合どうなるか考えます。3つ目に、体脂肪カットの期限がない場合で比較します。4つ目に、バルクアップ期間を固定した場合にどうなるか比較します。最後に、体脂肪率などの上限によってバルクアップ期間を定める場合を比較します。

バルクアップ期のみでの比較

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28週のバルクアップ期間の終了時点で、リラックス・バルク(赤線)とスロウ・バルク(黄色線)は筋肉の増加量が同じですが、リーン・ゲインズ(緑線)は明らかに筋肉の増加量が少ないです。

しかし、28週間の比較だけ見ても正しい比較にはなりません。バルクアップ期間を終えた後は体脂肪を落とすからです。

そこで、比較期間を減量期間まで含めるように延長してみます。

急な体脂肪カットの期限がある場合の比較

まず、コンテストなどの期限が36週目にある例を挙げてみます。減量は28週目の同じ時点から開始し、期限までに増量前の体脂肪量まで減らす必要があるとします。

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スロウ・バルクは、筋肉の喪失を最小限に抑えられます。

リラックス・バルクは、急速な減量が必要になります。減量をすすめるほど筋肉も減っていきます。これは筋肉の異化(分解)を抑制する以上のスピードでの減量を強いることになるからです。

リーン・ゲインズは減量の必要がありません。ゆっくりながら着実にバルクアップを進められます。

前もってわかっている体脂肪カットの期限がある場合の比較

上のような筋肉を減らしてまで急激な減量をしなければならない事態は多くの人には起こりません(ただ、多くの人は減量期間を誤っており、せっかくの増量を無駄にしていることが多いのも事実です)。

そこで、夏など、あらかじめ減量の期限がわかっている場合について比較してみましょう。

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この状況はスロウ・バルクとリーン・ゲインズの場合にはあまり前の例と大差がありません。スロウ・バルクは28週目からの減量で間に合いますし、リーン・ゲインズは緩やかな増量を続けていきます。

リラックス・バルクの場合は、減量を早めに開始します。するとバルクアップ期間が短縮されます。その結果、減量まで終えた時点ではスロウ・バルクより筋肉の増加量が少なくなってしまいます。しかし、依然、リーン・ゲインズよりは筋肉の増加量が多くなります。

増量期間を固定した場合(減量は重視しない)

では、減量の期限がなくなったらどうでしょう。スロウ・バルクとリラックス・バルクは同時期から減量期を開始するとします。

これは多くの人がやっているやり方です。体脂肪の量に関わらず、一年のうち大部分はバルクアップ期間とし、夏に向けて(多くは5月頃から)減量するというやり方です。体脂肪に無頓着なため、オフシーズンに妥協して脂肪がつきすぎると、夏に引き締まった状態にならないと嘆くことになります。

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リーン・ゲインズでは減量は要しません。夏にも緩やかな増量を継続できます。

リラックス・バルクは最も多くの脂肪を減らさなければなりませんが、増えすぎた脂肪のせいで1か月は引き締まった状態で海にでかけるのを諦めなければなりません。

スロウ・バルクでは、夏の中頃には体脂肪を増量前のレベルまでカットできます。その状態を維持もできますし、さらなるバルクアップ期間に移行することもできます。体脂肪は少しは増えますが、海での見た目を保つには十分な状態は維持できます。もし長期的な視点で筋肉の増加を最大限にしたいならば、この方法が最も効率的です。

体脂肪率が上限に達したらバルクアップを終了する場合の比較

例えば15%(十分な筋肉量があれば見た目は問題ないレベル)を上限とします。体脂肪率が15%になるまではバルクアップ期間とし、それ以降は減量期に入ります。

問題点としては、体脂肪率を正確に客観的に測定するのが不可能だということです。そこで、代替案としては、腹囲の上限を決めるのもお勧めです。注意点としては、下背部や腹筋の肥大も測定値に含まれるということです。

中級レベルのトレーニーの場合、前回体脂肪が増えてきて減量したいと感じた時が腹囲80㎝だったならば、次の増量の期限は82㎝くらいでしょうか。これくらいなら腹筋や背筋の成長も考慮できていると思います。

ここでは3通りの方法を長期間比べた場合にどうなるか比較してみます。

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リーン・ゲインズは長期間でみても変わらず緩やかなバルクアップを継続できます。

スロウ・バルクは長期間のバルクアップ期間を確保し、最も多くの筋肉量増加がみられます。15%の上限であれば、脂肪がつきすぎることがないため、これまでの例でみられた通り優秀な結果となります。

リラックス・バルクの場合は、スロウ・バルクと同等のペースで筋肉量が増加しますが、余分な脂肪がつきすぎるため、減量期間が長くなります。そのため、増量期間が短縮され、結果として筋肉量の増加はスロウ・バルクより劣ってしまいます。

長期間の比較では、スロウ・バルクが最も多くの筋量増加のポテンシャルがあることがわかりました。

リーン・ゲインズは筋量増加の点だけみればリラックス・バルクに大きく劣ってはいません。ただし、筋量増加が非常に緩徐で変化に乏しく、忍耐を要する方法なので、多くの人が成果が出るまでに投げ出してしまいやすいことは覚えておかなければいけません。

これらのことから、多くの人にとって、スロウ・バルクはお勧めのバルクアップ法だといえるでしょう。

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