最適なスクワットの「深さ」「足幅」「足の向き」とは

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スクワットの方法については諸説あり、過去に様々な研究が行われてきています。今回はそれらの文献をまとめた「optimizing squat technique」を参考に、最適なスクワットの方法について紹介します。

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膝の靭帯への負担

一般に信じられていることに反して、スクワットでは前十字靭帯に過度の負担はかかりません。膝関節を屈曲させていくと膝関節への圧迫力と剪断力は増していきますが、レッグエクステンションに比較するとずっと負担は小さいことがわかっています。後十字靭帯の場合も同様に、レッグエクステンションでは体重の4.5倍以上もの力がかかるのに対して、スクワットでは体重の3.5倍程度の力がかかるのみです。

これらのことから、スクワットは、レッグエクステンションなどのオープンキネティックチェーン種目と比較して、膝の靭帯への負担は小さいと言えます。

膝関節の屈曲が増す、すなわちスクワットで深くしゃがむほどに後十字靭帯への負荷が増すことは注目に値します。前十字靭帯には、膝屈曲が50°以下のときには小さな負荷しかかからず、それより膝が大きな角度で曲がると、前十字靭帯よりむしろ後十字靭帯への負荷が増すことが分かっています。

前十字靭帯への負担は、かかとを着けてスクワットを行うと、かかとを上げて行う場合よりもずっと小さくなることもわかっています。

より深くしゃがむと、膝が前に出やすくなるため、前十字靭帯への負担が増す可能性があります。膝がつま先より前に出ないようにすることで、膝へのトルク(回転モーメント)を減らすことができます。ただ、それによって股関節へのトルクが増してしまいます。また、膝が前に出ないようにすることで、体が前傾しやすくなります。それによって腰椎への負担が増します。膝が前に出ないようにすることで、前十字靭帯への負担は減りますが、股関節と腰椎への負担は増すということです。

視線

下を向くと、前方や上を向いた場合に比べて股関節や腰椎が屈曲しがちになります。腰椎への剪断力を抑えるために、視線は前向きにするのが良いでしょう。

筋肉の活動

膝への負担という面だけでなく、筋肉の活動度という面からみた場合に、最適なスクワットの足幅や深さはどれくらいなのかという議論は今も専門家の間で続いています。

スクワットの深さと筋肉の活動

ハーフスクワット(45°)、パラレルスクワット(90°)、フルスクワット(125°)を比較した実験で、立ち上がる段階においては、フルスクワットで大臀筋が最も活性化されることが分かりました。内側広筋は、パーシャルスクワットで活動が高まる傾向がありましたが、フルスクワットではあまり増しませんでした。しゃがむ段階においては、4つの筋肉(内側広筋、外側広筋、大腿二頭筋、大臀筋)の活動はスクワットの深さによって差はないという結果でした。

ただし、これらの結果は軽めの重量(体重の25%および100~125%)を用いた実験でのものであり、高重量の場合は結果が変わるかもしれません。

スクワットの深さと膝蓋大腿関節への負荷

立ち上がる段階において、速く動いた場合とゆっくり動いた場合で膝蓋大腿関節にかかる力は、それぞれ体重の4.7倍と5.9倍で同等でした。しゃがむ段階でも、速く動いてもゆっくり動いても負担は同等でした(それぞれ体重の7.6倍と7.4倍)。

スクワットにおいて動作の速度と膝蓋大腿関節への負荷は関係ないと言えます。

深くしゃがむほど膝への負荷は増していくことが分かっていますが、その実験は膝の角度が90°を超える範囲は評価していないため不明です。レッグプレスとスクワットについて調べたほかの実験では、膝の屈曲が深まるほど膝への負荷が増すという結果が示されています。

これらのことから、膝に痛みがある場合は膝の屈曲を「より機能的な」50°程度までに制限しておいた方が良いかもしれません。

スクワットの深さと大腿脛骨関節への負荷

立ち上がる動作でもしゃがむ動作でも、動作の速度によって大腿脛骨関節への負荷に差がないことが分かっています。

また、オープンキネティックチェーン種目(レッグエクステンションなど)は、クローズドキネティックチェーン種目(スクワットなど)に比べてずっと大きいことが分かっています。

膝の屈曲が深まるほど大腿脛骨関節への負荷は増していきます。

これらのことから、上記の膝蓋大腿関節と同様に、膝に痛みがある場合は膝の屈曲を「より機能的な」50°程度までに制限しておいた方が良いかもしれません。

足幅や足の位置と筋肉の活動

足幅(肩幅の75~140%)に関わらず、足の向きを変えて(ニュートラル、30~40°内転、80°外転)みても、下肢の筋群(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、長内転筋、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋)の活動は変わらないことがわかっています。

足幅については、2つの研究において、ワイドスタンス(肩幅より広い)の方が、長内転筋の活動が高まるという結果が得られています。この差は発揮されるパワーを高め、スクワットのパフォーマンスを向上させることにつながるかもしれません。

ハムストリングスの活性化

やり方に関わらず、スクワットではハムストリングスはあまり活性化されないことがわかっています。

バランスのとれた脚にするためには、レッグカールやスティフレッグデッドリフトといった、ハムストリングスに特化した種目を取り入れることが重要です。膝関節の動作と股関節の動作の両方から鍛えるため、上記2種目をどちらも行うことが理想的です。

ハムストリングスの筋群が大腿四頭筋に対して協調して収縮できるようにすることも重要です。そうすることで、脛骨の前方や外側へのズレを防ぎ、剪断力を減らし、膝関節の安定化につながります。ハムストリングスの筋力が高まると、膝を曲げたときの前十字靭帯への負荷が減ることもわかっており、怪我のリスクの低下につながります。

ハムストリングスの伸展時の力が大腿四頭筋の収縮時の力の1倍以上か、ハムストリングスの収縮時の力が大腿四頭筋の収縮時の力の0.6倍以上であれば、ハムストリングスと前十字靭帯の怪我のリスクが低まるということもわかっています。

まとめ

最も怪我のリスクが低く、筋肉を活性化させることができるスクワットとは、

  • ワイドスタンス(足幅は肩幅より広くする)
  • 足の向きはニュートラル(膝の向きとつま先の向きを平行にする)(競技選手は自身のスポーツに最適な向きにするのが理想的)
  • かかとを地面から浮かさない
  • 膝はつま先より前に出ないようにする
  • 視線は前向き(もしくは上向き)
  • 可動域は腰椎の前弯が維持できる範囲(お尻がお辞儀《but wink》しない範囲)をフルに使う(膝は115~125°)
  • 膝関節に痛みがある場合は、「機能的な」範囲とされる0~50°の範囲でスクワットを行う

考察

概ね結果には納得ですが、膝関節については無理に115°まで屈曲する必要はないと思います。

上図のような結果もあるため、膝関節は90~135°の範囲で屈曲させるのが良いかと思われます。大臀筋をスクワットのみで最大限鍛えたかったり、クリーンやスナッチを日常的に行うのでなければ、パラレルスクワットが、膝への負担を最小限にしつつ、大臀筋まで十分刺激することができる最適なスクワットになると思われます。

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コメント

  1. 森  和彦 より:

    非常に有難い情報です。今後どうSQに取り組むか指標ができました。
    2年前から体作りと思い、やり始めたフリーウェイトトレーニングですが昔、半月板切除の経験があり、様々な情報の中で「膝にはフルが負担が少ないし、トレ効果を考えればフルSQしかない」がSQの神髄と思いやっておりました。勿論、多々ある情報の中ではフルは膝に悪いという方もいらっしゃいますが、貴兄のように資料をもとに納得いくような説明ではありませんでした。今回は実に有難かったし納得しました。
    しかし、SQを50°ぐらいでやる事に踏ん切りはつきますが、あのバーベルを担いで
    ガツンとくる感じが薄れるのは残念です。そこらあたりはDLで解消するしかないのでしょうね。

    • Yasu より:

      コメントありがとうございます。
      半月板損傷の術後なのですね。加重に耐える力が下がっていると思われますので、高重量のトレーニングには注意を要しそうですね。
      膝関節の屈曲が90°近くなると剪断力に加えて圧迫力もかなり増してきますので、可動域を制限するのは一手かと思われます。
      パーシャルスクワットは高重量が扱える分、無理をしてバランスを崩しやすいので、その点はご注意ください。
      可動域を広くとるならば思い切って重量を下げるのも良いかもしれません。様子をみながら慎重にステップアップしていただければと思います。
      デッドリフト(とくに大腿部を狙うならスモウデッドリフト)も良い種目だと思います。ぜひ頑張ってください。