トレーニングにおけるストレスと適応について

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効果的なトレーニングのためには、ストレスとそれによる回復の反応について理解しておく必要があります。ストレスがかかった後に生体に起こる変化を理解することで、トレーニングで筋力が向上したり、オーバートレーニングが起こる仕組みがわかるようになると思います。

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ストレス、回復、適応

ストレス(stress)とは

生理学的に安定した状態(=ホメオスタシス)を乱す因子(ストレッサー)に対する生体の反応のことです。

ワークアウトだけでなく、仕事や人間関係といった、日常生活の身体的・精神的な全ての負荷がストレスとなります。

回復(recovery)とは

ストレスを受けた状態から、ストレスを受ける前の状態まで元どおり回復することです。

適応(adaptation)とは

回復の状態から、さらに少しだけストレスに対して抵抗力を備えた状態になることです。

これは、次に同じストレスがかかってもホメオスタシスが乱れないようにするための生命維持機構のひとつです。

汎適応症候群(general adaptation syndrome)とトレーニング

汎適応症候群とは、ハンス・セリエ(Hans Selye)が唱えた、ストレスに対する生体の反応を表したモデルです。セリエは、ストレスを「外部環境からの刺激(=ストレッサー)によって起こる歪みに対する非特異的な反応」と考えました。

セリエが研究したのはトレーニングのためではありませんでしたが、このモデルについて理解することはトレーニングの成功のためには有効です。

汎適応症候群は3つの時期に分けられます。ここではトレーニングになぞらえて説明していきます。

警告期

第一段階は警告期です(ショック期とも呼ばれます)。

これはストレスによってホメオスタシスが乱された直後から始まる急性期の反応です。

この時期の特徴は、一時的な抵抗力(ここでは筋力)の低下です。

鍛えた局所の筋肉で起きた炎症に対して、細胞が自身の構造や機能を維持するために、ストレスが過ぎ去るまで代謝などの活動を低下させるのです。

筋力の低下は、純粋な筋力強化種目では分かりづらいですが、テクニカルなパワー系の種目ではより顕著になります。このパフォーマンスの低下は約48時間続きます。

トレーニーはトレーニング後に、ホメオスタシスが乱れたことを示唆する、軽度の筋肉の不快感を感じます。この時期には痛みや灼けつくような筋肉痛を感じることはなく、凝りや疲労といった自覚症状になります。

初級者は、筋力も負荷に対する抵抗力も未発達なため、上級者よりも軽微なストレスでホメオスタシスの乱れが起こります。トレーニングが進むに連れてホメオスタシスの乱れを生み出すために必要な負荷は増していきます。

適応期

第二段階は、適応期です(抵抗期とも呼ばれます)。

生体は、遺伝子の働きを調整し、ホルモンの分泌量を変化させ、各種タンパク質の産生量を増やすことで、トレーニングというストレスで低下した筋力を回復させます。こうして生体は生命を維持するために、ストレスに対して抵抗力を備えます。

ストレスに対する反応は、ストレスの種類に対して特異的であり、備えられる抵抗力もストレスの種類に対して特異的です。

セリエは、典型的な場合、適応期はストレスを受けてから約2日後に始まるとしています。また、同じストレスを定期的に受けた場合、約4週間で完全な適応が完了するとも述べています。

初級者ではストレスを受けてから24~72時間で適応が完了します。適応を促すためのホメオスタシスの乱れは軽度の刺激で起こりますし、理想的な状況でなくても速やかに回復が得られます。それに対して、上級者では、適応に1~3か月、もしくはそれ以上の期間を要します。適応を促すためには、強い刺激を積み重ねて与えることが必要になってきます。

A:初級者、B:中級者、C:上級者。ストレスを受けてから適応までの時間の違い。トレーニングのキャリアを重ねるほど、回復・適応までに要する時間は長くなっていく。

疲弊期

第三段階は疲弊期(Exhaustion Phase)です。トレーニングの分野では、オーバートレーニングと呼ばれる状況です。

強度が強すぎる、頻度が多すぎる、ストレスがかかる期間が長すぎるなど、過剰なトレーニングのストレスに晒されていると、適応の限界を超え、疲弊してしまいます。自己の許容量を超えたトレーニングは避けなければいけません。

実際のところ、疲弊する危険性が高いのは中級者から上級者です。初級者は、筋力やスタミナが乏しいため、疲弊するほど過剰なトレーニングを行うことができないことが多いからです。

まとめ

上記の内容をまとめると、下の図のようになります。


安定した状態(ホメオスタシス)から、ストレスがかかった場合、3つの結果がありえます。

  1. ストレスが弱すぎる場合、細胞や全身の平衡状態(ホメオスタシス)を乱すことができず、パフォーマンスの変化は起こりません。
  2. ストレスが強すぎる場合、ホメオスタシスを乱すことはできますが、適応の許容量まで超えてしまうためパフォーマンスの低下が起こります(すなわちオーバートレーニング)。
  3. ストレスが適切な強さであった場合に、ホメオスタシスの乱れに対して、好ましい反応としての適応が起こり、パフォーマンスの向上が得られます。

このようにしてパフォーマンスが向上した状態で、さらに少しだけストレスを強めていくことで、さらなる適応が起こり、徐々にパフォーマンスを伸ばしていくことが可能となります。トレーニーが伸びない理由の大部分は、この少しずつストレスを強めることを行わないことが原因です。すでに適応したストレスでは、新たな適応は起こらないのです。効果的なトレーニングの本質は、常に新しいストレスを与え続けることです。その積み重ねこそがトレーニングであり、トレーニングが単なるエクササイズとは異なるところなのです。

参考

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